かつての憧憬は今、僕の腕のなかに。
誰よりも優れ、誰からも好かれていた兄が帝都から戻ってきた。 名もなきものに魂を喰われ、変わり果てた姿で。
蝉が鳴き、木槿の花が揺れ、名もなきものたちが駆け巡る真夏の景色を眺めながら、僕は兄のために水蜜桃を切り分ける。 かつての憧憬は腕のなかに、やがて夕立が訪れる。遠く雷鳴を伴って。
これは、優秀な兄へ向けて弟が抱く愛着の物語。
短編
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